【森林環境】日本林業の課題

【森林環境】日本林業の課題

日本の林業の課題

戦後の一斉造林が伐採適齢期を迎えているにも関わらず放置されている日本。OECD加盟国中第3位の森林大国でありながら、資源を生かしきれないどころか災害発生の原因となるほど状態を悪化させているのが現状です。森林放置の主な理由として挙げられるのが林業離れ、低収入による林業就労者数の少なさ、所有者不明林等です。持続可能な森林管理へ、戦中戦後の過ちを繰り返さない、長期的視野に立つ林業の在り方が問われています。

 

就業人口低下と収益性 

時代の必要に迫られてのこととはいえ、かつての一斉皆伐・一斉造林は日本の林業に反省を促す結果となりました。不足を補うための輸入木材は追い打ちをかけるように国産材の市場価格を暴落させます。ほぼ国策として推移してきた日本の林業。上意下達の、現場目線の欠如は今に始まったことではありません。労多くして採算の取れない産業、というイメージが定着したのは紛れない事実です。林業離れが進み、採算の合わない産業として就業人口の減少が続きます。

 

1980年には14万6千人いた就業者数が、2015年には1/3以下の46千人に減少。高齢化率も25%と高いままです。山村地区の過疎化が進み、山間部に無人集落が目立つようになりました。

 

低い収益性

就業人口減少の理由として、少子高齢化による労働人口の減少はもとより、林業に定着した負のイメージ、つまり収益性の低さが挙げられます。安価な輸入木材に圧されて国産材の価格は暴落し、1980年のピーク時に1㎥あたり76,400円だった檜は2017年には18,100円にまで落ち込みました。杉も約1/3に下落しています。高品質で外国産との差別化を図っても木材需要の低下から回復は難しい状況といわれてきました。

 

コロナ禍とウッドショック

そしてコロナ禍、ウッドショックがブームのようにやってきます。巣ごもりの住宅リノベーションが進み一気に需要が高まったのです。原木不足が叫ばれ、入手困難の状況が続いています。国産材ももちろん急騰。高騰した原木の収益が、滞りなく山林所有者に還元されれば林業が脚光を浴びる可能性は十分あります。

 

分離構造による収益分散

戦後から定着した山林所有者と管理者の分離構造、国策として進められた森林組合の管理経営などが、結果として山林所有者の利益を減らす仕組みになっていたことも林業離れの理由のひとつです。管理を委託された業者がコスト削減のためにもっとも効率のよい方法を選択するのは当然でしょう。そして一斉皆伐が頻繁に行われました。一時的な収益を帳消しにするようなその後の管理費用、そして多大な環境負荷など多くの課題を残しています。

 

後継者不足と所有者不明の放置林

日本の森林面積の6割は私有林であり、人工林の2/3は何らかの形で管理が不十分な状態です。残りの1/3は意欲的な林業家による集約が進んでいますが、過大な負担が問題視されています。また、登記簿上の地籍調査による所有者不明林は2017年時点で28.2%となり、後継者問題に頭を悩ませる山林所有者も少なくありません。所有者不明の森林は放置され荒廃し、土砂災害などの大きな要因となってしまいます。生態系は乱れ、野生動物と人間とのトラブルが目立つようになりました。結界でもあった緩衝地帯の里山が失われつつあるからです。

 

さまざまな対策と展望

木材価格は持ち直しつつあるものの木材不足が叫ばれている昨今、林業従事者数はまだまだ不足している状態です。とはいえ、35歳以下の若齢者の就業率が増加しているのは明るい兆しでしょう。2005年から始まった「緑の雇用」事業や新規就業者への研修支援、地方自治体と協力しての小規模自伐型林業の推進などの結果が少しずつ表れています。施業方法も、環境負荷の少ない、低コストで継続的に収入を得られる少量択伐施業が定着しつつあります。

 

ICT活用等による精度の高い管理

放置林のうち、所有者の判明している森林に関しては、市町村が仲介役となる森林経営管理制度が2019年度より運用が開始されました。2024年からは森林環境税も森林整備の財源として活用されます。リモートセンシング技術やICTの活用により詳細な森林資源調査と生産管理、所有者・境界線の明確化が進んでいます。私有人工林のうち、経済的価値のある森林は集約化をいっそう推進し、残りは針広混交林へと誘導し公益的な役割を求める方針です。

 

カーボンニュートラルの実現へ

高度成長期と重なるかのような木材不足による高騰は世界的な問題となっています。今ある資源をいかに無駄なく使いきるか、そして循環できるか、2050年のカーボンニュートラルの実現も併せて、計画が実践段階に入ったところです。戦中戦後の過ちを繰り返さない慎重さが望まれます。

 

木質製品の多様化と収益の還元

かつての薪炭林の需要を思わせるようなバイオマスへの木材供給、自在な建築材として用途の広いCLT(直交集成板)の普及など、商品としての多様化とウッドショックもあり木材市場は極端な供給不足に陥っています。人材不足の改善と現行の対策の成果が表れるまでにもう少し時間がかかりそうです。いっそう無駄のない木材活用が求められます。

 

HAND in HANDでは間伐材による木製品を販売しています。収益の一部を森林保全活動へ寄付し、森林保全へと還元する取り組みです。持続可能な社会、自らをも含めた地球の未来について多くの人が考えています。

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