伐採の種類とその役割

伐採の種類とその役割

伐採の種類とその役割

木を伐り倒すことを伐採といいます。家庭の庭木伐採から林業の丸太生産まで幅広く使われる言葉です。林業における伐採は、木の生育段階に応じて除伐・間伐・主伐と呼ばれ、方法によっては皆伐・択伐とに分けられます。環境への負荷と永続的な林業経営の観点から、近年は択伐が推奨されつつありますが、皆伐の方法も多様になり環境負荷を最小限にする取り組みが模索されています。伐り出された木材の用途拡大と併せて、環境への配慮と林業の採算性を考えていくことが大切です。

生育過程における除伐・間伐・主伐の違い

植林された木が育ち、木材として伐り出され商品になるまで十数年、主伐を迎えるまで数十年の時間を要します。その期間の育林、苗木から幼齢木へ、そして若木、成熟して伐採適齢期を迎えるまで幾多の手入れが必要です。除伐・間伐はゴールである主伐へ向けて必要不可欠な作業であると同時に森林を健全に維持するためにも必要な工程です。

除伐の役割

除伐とは育成対象の幼齢木を守るために、その成長の妨げになる木や発育不良の木を伐ることをいいます。林内整理伐ともいい、発育不良木の伐採跡に新たに植栽することがほとんどです。農業における除草にも似て、工程的には下草刈りと間伐の中間を担う作業です。灌木や細い苗木、草・つるなどの除去になるので主に使用するのは刈り払い機や鎌。状況に応じてチェンソーも使用します。

間伐の役割

木の成長に従い、森林の密度調整のために行われるのが間伐です。混み合ってきた木々の間隔を調整するために間引き、地表に光を入れます。残った優勢木の成長を促すことはもちろん、下層植生も育ちやすくなり、水源涵養や土砂災害防止の効果が高まります。

除伐を経て13年目くらいまでは伐り捨て間伐と呼ばれそのまま放置されますが、一般的には15年目辺り、直径1213㎝くらいになると足場丸太などの商品として取引されるようになります。商品になり始めてからを間伐と呼び、除伐と区別するケースもあります。また、利用間伐と称して、択伐と同一の意味に捉えることもあり一様に区分できません。

間伐の本質的な目的は森林の密度調整ですが、結果的に環境保全機能と経済活動を併せ持ちます。大いに奨励されるべき作業であり、政府も支援しています。しかしながら補助金目当ての切り捨て間伐も目立ち、逆に森を荒廃させたケースも少なくありません。場当たり的な政策への反省と広い視野に立った長期的計画の必要性が叫ばれています。

本数調整伐とは

防災林や保安林の機能維持のために伐採することを本数調整伐といいます。混み合ってきた森林の立木の本数を調整して災害に強い健全な状態を維持する伐採です。間伐のひとつの種類であり、作業は主に自治体が担います。

主伐の役割

間伐が密度調整の伐採なら主伐は販売目的の伐採です。林業における主たる収入源として、目的とする径級・適齢期に達した木を伐採します。夏場の木は水分をたっぷり含み商品価値が低いため、乾燥した冬場に行われるのが一般的です。主伐の判断は、それぞれの山の状況や経営方針によって異なり、伐採適齢期や径級はもっとも高い商品価値を持つ段階で判断されます。

伐採方法による分類~皆伐と択伐~

伐採の方法は大きく皆伐と択伐に分けられます。第二次大戦後の復興での一斉皆伐による山林の荒廃とその後の木材不足の反省から、近年は小規模林業家を中心に択伐志向が高まっています。

皆伐のメリットとデメリット

皆伐とは指定された一定の範囲の木をすべて伐採することです。定義上は、皆伐区画の1辺が伐採する木の樹高の2倍以上を皆伐といいます。一度に多くの木を収穫できること、少ない経費で合理的に作業できるなど多くのメリットがあり、これまで頻繁に用いられてきた伐採方法です。ほとんどの場合、伐採跡地に新たに苗木が植えられますが、育つまでに長い年月を要すること、その間の生態系の乱れや土砂災害の危険、環境面へのリスクが懸念されます。そのため、伐採するエリアの小規模化が進み、あらかじめ決められた範囲を伐採するパッチ皆伐、並んでいる木を線状に伐るストリップ皆伐など、さまざまな方法が試されています。

択伐のメリットとデメリット

木の成長具合や市場の需要に合わせて、対象区画から木を適量選び、数年から数十年おきに抜き取るように伐採する方法を択伐といいます。伐採跡地は植林されることもあれば天然更新に任せる場合もあり、持続的に林業経営できると共に、森林へのダメージが少なく景観もほぼ変わらない利点があります。生態系や環境にも配慮できる理想的な伐採方法といえるでしょう。一方で、伐採木が他の木を傷つけたり路網の整備が難しかったり、収益が安定せず計画を立てにくいなどのデメリットもあります。とはいえ、持続可能な経営の観点から選択する林業経営者が増えていることは紛れもない事実、現在脚光を浴びる若い自伐型林業家の多くは長伐期択伐の施業法を用いています。

環境配慮と木材の多面的有効利用

皆伐も択伐も主伐の方法のひとつであり、林業経営者の計画によって選択されます。最小限の環境負荷と採算効率をベースにさまざまな試みが為されて当然でしょう。災害防止も含めた環境への配慮と採算効率を上げるために必要なことは路網の整備。伐り出された木材の最大限の利用、そして販路拡大も有効な手掛かりとなります。持続可能な社会と地球環境、持続的な林業経営を切り離して考えることはできません。

間伐材の利用拡大

間伐材の有効利用のひとつとして木工製品があります。森を、自然を身近に感じることのできる手軽なアイテムです。著名作家による珠玉の逸品をネット上で販売しているのがHAND in HAND。収益の一部は間伐などの森林保全活動へ寄付されます。持続可能な循環型社会への一助となれば幸いです。

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