夕焼けの森

人工林と天然林について

人工林と天然林

森林にはさまざまな成立過程がありそれぞれに呼び名があります。人工林と天然林という呼称は森林を大別するとき対義語として用いられる言葉です。それぞれに景観が美しく、木材資源の供給や防災、観光レジャー・水源涵養など、人の暮らしと密接に関わってきました。

けれども、世界的に森林面積は減少傾向にあり、気候変動や生態系の破壊などの問題、また日本国内においては林業従事者の減少による人工林の放置などの課題を抱えているのが現状です。

 

人工林と天然林の定義

人工林と天然林は対義語として用いられるため、立場や状況によって意味合いが変わったりします。植樹や伐採後の人工林が天然更新した場合、二次林・自然林と呼ぶこともあれば、天然林に含めることもあります。

 

人工林とは

FRA(世界森林資源評価)2020によると人工林とは植林や播種によって成立した樹木が優先する森林と定義づけられています。人工林は、さらにプランテーションとその他の人工林とに区分されます。

 

プランテーションとは、熱帯プランテーションとも呼ばれ、気候に恵まれた熱帯・亜熱帯地域で国際的に取引価値の高い単一の作物を栽培する大規模な農園のことです。主な作物はゴムの木やアブラヤシ、バナナ・コーヒー・カカオなどです。

 

そもそもは植民地時代の奴隷制度から始まったプランテーションですが、現地の安価な労働力雇用という人道上の問題と大規模な森林破壊、違法伐採など多くの問題を抱えています。

 

日本の人工林には工業や建築材料としての木材収穫を目的とする場合と、防風林や防潮林・防砂林など自然災害を防ぐ目的の人工林、そして薪炭林があります。それぞれに適切な管理を必要としますが、近年では林業従事者の減少や森林所有者の不明などを理由に放置された人工林が土砂災害を引き起こすなど社会問題になっています。

 

天然林とは

人の手によって管理される人工林に対し、天然更新による樹木が優先している森林を天然林と呼びます。原生林、場合によっては天然生林や自然林などの総称となります。

 

このうち原生林は、過去に人の手が入らず大きな自然災害による痕跡も見られない森林をいい、アマゾンの熱帯雨林やアラスカ・ロシア・カナダの森、日本国内では知床や屋久島・白神山地など、わずかな地域に限られます。

 

天然生林とは伐採後の天然更新や天然更新補助作業を受けた遷移途上の森林のことです。人為的な影響が少なく遷移段階の進んだ森林は自然林と呼ぶこともあります。天然生林・自然林が極相に達したとき初めて天然林と呼ぶこともあれば、総称することもあり臨機応変に使われています。

 

 

人工林と天然林の推移

世界における森林面積はおよそ40haで全陸地の30%ほど、このうちの約7%が人工林になり、アジア・アフリカを中心に人工林が増加傾向にあります。とはいえ、2021世紀にかけての森林消失率は著しく、19902020年の30年間に17800haが失われました。この傾向に歯止めがかからなければ、25年後には28000種の生物が絶滅し、100年後にはすべての熱帯雨林がなくなるといわれています。

 

日本の天然林の推移

世界の森林減少傾向に比して日本の森林率は70%でほぼ横ばい、OECD加盟国の中でもスウェーデン・フィンランドに次ぐ第3位。南北に長く亜熱帯から亜寒帯までの湿潤な気候と併せて、急峻な地形による多様な自然を満喫できる恵まれた国といえます。

 

緑豊かな景観は美しく、天然林の代表格でもある知床や屋久島・白神山地などの原生林は訪れる観光客を心身共にリフレッシュさせてくれます。

管理の行き届いた人工林の美しさも見逃せません。長野県の天竜杉・三重県尾鷲の檜林、そし奈良県の吉野杉は日本の三大美林といわれています。

 

日本の人工林の推移

日本の森林面積に占める人工林の割合はおよそ40%。世界大戦後の復興もあり、過去50年間で大幅に増加しました。その分、15%ほどの天然林が失われています。それにも拘らず木材自給率は低く平成14年には18.8%にまで下落しています。自国の山林を顧みず、安価な輸入材に依存した結果です。その大量輸入が世界の天然林比率を下げたことは言うまでもありません。

 

その後、木材自給率はいくらか持ち直したものの、林業従事者の高齢化や事業収益の難しさから林業離れが進みます。放置された森林が土砂災害や花粉症の原因のひとつとして問題視されています。

 

 

日本の人工林の歴史

日本の歴史上、最初の本格的な人工林は吉野の川上村にある下多古村有林といわれています。江戸時代の初期から植林が始まり、今なお樹齢260400年の杉や檜が何十本も林立して様は圧巻です。これとほぼ同時期の慶長年間(15961615年)に植林されたといわれるのが鳥取県智頭町の慶長杉。樹齢400年に達する24本の巨木が神々しいまでの存在感を示しています。

 

戦後の復興と木材輸入の自由化

木材資源供給の針葉樹林とエネルギー供給の薪炭林は生活に欠かせないものでしたが薪炭から石炭へ、そして石油・電気へとエネルギーが変わります。薪炭林は放置されるか木材資源としての人工林に生まれ変わりました。その木材資源としての針葉樹林も第二次世界大戦後の復興のための伐採が急拡大。新たに植栽するものの供給が追い付かず、海外からの木材輸入の自由化を契機として林業離れが進み、放置されたまま現在に至ります。

 

日本の人工林の課題

1950~1960年代に植林された人工林が収穫期を迎えた近年、林業従事者の努力や政府の対策により木材自給率が増加の兆しを見せ始めています。とはいえ、自給率3割はOECD加盟国の中で最下位。伐採後の再造林がされていない造林放棄地も目立ちます。政府は環境保全の名目で間伐に対し税金を投与しますが補助金目当てにそのまま放置する切り捨ても少なくありません。

 

裸地が極相森林になるまで200年以上かかるといわれています。木材供給の人工林にそこまでの期間は必要ないとはいえ、森林育成と環境保全は切り離せない問題であり、長期にわたる計画が必要です。それでも観測史上初といわれる予期せぬ大災害が起こり水泡に帰すこともある時代。その大災害ですら、山林を放置し自然を軽視してきた報いとも受け取れます。間伐材・製材における端材はもちろん、落葉落枝といえども無駄にしないことが理想です。

 

HAND in HANDの取り組み

切り捨てられ、やがて土へと帰する可能性もある間伐材を余すことなく利用、木工品・木製品の販売を通じて収益の一部を森林保全活動へと寄付するのがHAND in HANDの取り組みです。限りある資源を無駄にしないことはもちろん、木材自給率の向上と健全な林業経営への支援を目的としています。決して絵空事ではない、持続可能な地球へのささやかな志です。

ブログに戻る
1 3