まきを抱えている人

環境も林業も救う?自伐型林業とは

自伐型林業

戦後の一斉皆伐、一斉造林の後、林業離れが進み伐採適齢期を迎えたにも拘らず放置された森林が問題になっている日本。その荒れた森林の救世主のように現れたのが自伐型林業家です。環境への関心の高い若い世代が多く、意欲的な施業で安定収入と森林保全の両立を目指します。自立した新しい林業経営と地域創生の鍵を握る取り組みとして大いなる期待を抱かせてくれます。

 

 

自伐型林業とは

自伐型林業とは、山林の所有者が自ら経営と管理・施業に携わり、継続的に収入を得ていく林業です。これまでのように森林組合などを介さないため収穫による利益は増加する反面、責任を持って所有する山林を自ら管理しなければなりません。意欲的な若い世代の就労が多く、より高い次元での採算性と森林の環境保全を追求します。放棄され荒廃しつつある山林の活用と、過疎化の進む地方再生への鍵となる森林経営です。

 

 

自伐型林業への期待

環境への関心が高い若い世代が定着しつつあるというだけで無限の可能性を感じさせます。ICTを活用したデータ収集と小規模経営によるフットワークの軽さ。謙虚な視点からの施業方法の見直し、そして採算性の向上と環境負荷の軽減なども見込まれます。何より、地方が活性化することは間違いありません。

 

途切れない収入と採算性への期待

新たに就労した自伐型林業家が、経済的な事情により皆伐をしようとしたら熟練の林家に「勿体ないことをするな」と諭されたといいます。つまり、皆伐によって一時的に大きな収入を得ても、その後山は荒れ、育林に長い年月と多大な労を要するからです。むしろ、少量の間伐を繰り返し、継続的に収入を得た方が生活も安定し、健全な森林を維持できます。自伐型林業家の多くは小規模で家族経営。抜き取りの間伐を繰り返す長伐期択伐は規模に見合う適切な施業方法といえるでしょう。

 

採算の合わない産業といわれてきた林業界ですが、低コストで少量の間伐を繰り返しつつ大径木の成長を促す長伐期択伐施業により、収入が途絶えず拡大しつつ持続します。経済的にも林業家としての自立が見込まれます。

 

若齢者の移住による地方創生への期待

少子高齢化による労働人口の減少、山林地区の過疎化は直面している問題でありながらさらに拍車がかかっているのが現状です。あらゆる産業における35歳以下の若齢者就労者数が減少傾向にある中、林業界だけは1990年以降増加し続け、2015年には17%に達しています。自伐型林業の推進が、若齢者の就労の一助となっているようです。環境への関心の高い若い夫婦が山里に住み、子育てをしながら林業を営む姿は理想。林業界が活性化するのはもちろんのこと、かつての日本を取り戻すかのように地方創生への期待が高まります。

 

 

自伐型林業を始めるには

比較的ハードルが低く手軽に始められそうな自伐型林業ですが、始める前に注意しておきたいポイントがいくつかあります。土地選びと施業方法です。選んだ土地は動かすことはできず、伐ってしまった木は戻せません。自伐型林業を軌道に乗せるためには慎重に土地を選ぶこと、そして施業法を間違えないことが大切です。

 

最適な土地選びとは

購入する土地は広いに越したことはありませんが、安価なだけの物件に飛びつく前に検討しましょう。自伐型林業は周囲の協力なくして成功しません。自伐型林業への協力体制が整っている自治体、過去に林業移住者実績のある自治体。また、土地付きで林業従事者の地域おこし協力隊を募集している自治体もあり、選択肢は少なくありません。いずれにせよ、自治体の推奨する土地を購入するのが望ましいでしょう。ただし、すでに効率重視の皆伐痕や幅広の作業道の敷設された森林は、修復に時間を要するため避けた方が無難です。

 

全国に自伐型林業の推進組織が30以上設立されています。そのつてを辿るのもひとつの方法です。林業は危険を伴うことが多く体力と根気を必要とする仕事。相談する相手、教えてくれる人が近くにいたら心強い限りです。

 

皆伐より択伐による継続的収入

自伐型林業が目指すのは自立した林業経営。そのためには継続的な収入が必要です。一斉皆伐は一度に大きな収入が見込めますが大がかりな設備が必要なうえに収入が継続的ではありません。そのため、小規模経営の自伐型林業では必然的に択伐が選択されます。量より質の少量生産で持続する森林経営を目指します。

 

兼業も視野に入れる

質を高めるとはいえ少量生産、さらに木材は時価なのでどれだけの収入が見込めるかは未知数です。自伐型林業家として軌道に乗るまでは農業や付随する産業などとの兼業も視野に入れておきましょう。所有する森林を案内するガイドツアーや木工製品の販売、林業体験会などはPRにもなります。

 

木工製品の販売

HAND in HANDでは間伐材による木工製品を販売しています。木の香り・肌触り・木目の美しさをじっくり堪能できる珠玉の逸品揃いです。収益の一部を森林保全作業へと還元する取り組みは消費者と林業家を結ぶささやかな架け橋。手に取って、地方創生と環境保全に尽力する自伐型林業家へ、思いを馳せていただけると幸いです。

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