【森林環境】森と共生する篤林家とは

【森林環境】森と共生する篤林家とは

篤林家について

自ら山を所有し理想的な林業経営をしている林業家、林業への深い造詣を持ち、地域の指導的立場にある林業家を「篤林家」と呼びます。知る人ぞ知る耳慣れない言葉ですが、江戸時代から続く「篤林家」もあり、都道府県知事の認定する「指導林家」と意とするところはほぼ同じです。林業に篤い心で取り組み、森を守り、培ってきた技術と知恵を伝承します。

 

篤林家の定義

○○家という言葉、芸術家・作家・画家・評論家など、自称他称に関わらず、その道に長けた人を指すときに用います。林家とは、山を所有し、林業に携わる人のことです。篤という字には篤い・重々しいという意味があり、篤志家・危篤などの熟語があります。すなわち篤林家とは、篤い心を持って林業に関わり、その研究・奨励に熱心な人、林業に対する深い造詣と高い技術を持ち地域の指導者的立場にある林業家、理想的な林業経営を行っている人と定義づけることができます。

 

指導林家と篤林家

「指導林家」とは、地域において模範的な林業施業技術を持ち、地域林業の中核を担う林業家のことで、定義としては「篤林家」とほぼ同じです。市町村長の推薦を受け、各都道府県知事が認定する点が異なります。林野庁の「指導林家等実施要領」に明確に定義されているため、言葉として「篤林家」より広く知られているようです。古くから「篤林家」として名を馳せていた林業家も多く、江戸時代から続く「篤林家」もいます。そのほとんどが「指導林家」に認定されているのはいうまでもありません。認定を受けるか受けないかの呼称の違いに対して、どちらで呼ぶかは呼ぶ人の自由。「篤林家」や「指導林家」が現場で培ってきた技術と知恵は、引き継ぐべきかけがえのない財産であることは間違いありません。

 

青年林業士

「指導林家」の前段階のような位置づけにあるのが「青年林業士」です。「指導林家」と同様、市町村長の推薦により都道府県知事が認定します。若く意欲的な林業家の資質の確保と育成を目的に認定され、認定後5年で「指導林家」の認定要件を満たします。意欲的な林業経営とリーダーシップ、森林・林業に関する調査研究が活発である等の資質が認定要件となります。

 

指導林家の認定要件と活動

「青年林業士」として5年活動を経ること、人格と見識がすぐれ、積極的に育成指導活動ができるなどの要件が必要となります。主な活動として、都道府県主催の研修会への積極的な参加、森林・林業教育の指導者として学習の場の提供や技術指導、「林業普及指導員」と協力し地域の林業振興に寄与することなどが記されています。

 

林業普及指導員との違い

「林業普及指導員」とは、森林法に基づく国家資格であり、林業の改良指導や林業関連の技術普及指導をする専門家です。各都道府県に配属される職員、すなわち公務員であり、森林所有者に対して地域の実情に応じた指導や協力・支援を行います。「篤林家」「指導林家」とは立ち位置が異なりますが、林業従事者や新規就労者にとって良きアドバイザーであることは同じです。互いの協力なくして林業の振興、持続可能な森林経営は成り立ちません。

 

篤林家に訊け!~心に刺さるひとこと

公的な機関からのお達しというのは杓子定規的であり、やんわりとした表現の中にも支配感を漂わせていたりします。対して、生活の中から培われた言葉は、強い口調でありながら衣類や皮膚をすんなり通り越して心に刺さります。血の通った生きた言葉だからでしょう。「篤林家」と呼ばれる方々の言葉がそうです。

 

妨げを省く

日本林業の課題として林道の敷設が取り上げられます。極端に高い法面や一般車も乗り入れする大規模な林道が災害に脆く、山の崩壊につながっていることは、しばしば外国の林業関係者にも指摘されてきたことでした。

「林業の神髄は妨げを省くこと」

と、ある篤林家が言います。壊れるような林道をつくることは妨げなのです。自然災害だから仕方ないというのは言い訳にすぎません。その自然を相手に仕事をするのが林業。かの篤林家の高密路網の作業道は、豪雨災害により周囲で土砂崩れが多発する中、びくともしなかったといいます。山を知り、自然を知り、その糧で生かされていることを知る篤林家ならではの言葉です。

 

木というのは一本一本違う

需要に合わせて育林するだけが林業ではありません。その山に合う木があり、その木が健全に育てば利用価値はあるはずです。人と同じように、木にも一本一本に個性があります。愛情を込めて育て上げた木の出荷を慈しむように語る篤林家。木製品になってしまうと同じように見えるかもしれませんが、色合い、香りはもちろん、同じ木目は一か所もありません。それぞれの木の良さを生かした製品作りは木材産業の進行中の課題でもあります。消費者としても、違いの分かる眼を養いたいものです。

 

日本の職人による木工製品をオンラインで

国産間伐材や環境に配慮された木材を活用した、国内作家による木工製品。一流の木工職人による製品はそれぞれの木の持つ個性を存分に発揮し、育まれた森への想像を掻き立ててくれます。その木工製品の、オンラインでの販売を手掛けるのがHAND in HAND。収益の一部を森林保全活動に寄付する取り組みは自然のサイクルにも似た、循環型社会への第一歩です。

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